ゆるっと投資〜ゆるっと・気軽に・楽しむ投資〜

投資、資産運用を中心になるべく分かりやすく語ります

高配当株投資に関する考察

f:id:akahisi:20200101184406j:plain

今回の記事はとあるところで披露したものです。

 

書いていることは

 

www.enjoy-investment.net

 この記事がベースです。

 

主旨は

・配当金を「主目的にした」投資は配当還元の特徴、企業側の狙い、税金面から推奨はしない

ということです。高配当の企業に投資してはいけないという話ではありません。

 

・配当金を出している

・でも成長性は残っている

・配当性向が高くない(無理はしていない)

のであれば高配当企業でも問題ないです。ここは分けて考えるべきです。

 

また、筆者は配当に関して海外証券会社同様のDRIP制度(配当金を投資元本に自動組み入れする仕組み)の導入を強く求めます。DRIP制度があれば税金面のデメリットが無くなるため、高配当・連続増配企業への投資に意義が出てきます。

 

税金面のデメリットがなくなれば高配当企業・連続増配企業は「元本が成長する可能性がある債券」へと変貌します。無論株式なので下落リスクがありますが(この辺は後述の本編をご覧ください)、配当を無駄なく再投資して複利運用することが可能となります。

 

ここからが本編です。なお、長文なのでお時間ある時に是非ご覧ください。

<目次>
1.高配当銘柄投資のメリット

2.そもそも配当とは
3.バークシャー・ハサウェイが配当を出していない(と思われる)理由
4.配当の致命的なデメリットとは?
5.銘柄を選ぶ際に配当を優先しない方が良い理由

 

1.高配当銘柄投資のメリット

高配当銘柄投資とは・・・
配当利回りが高い(目安として5%以上)銘柄を志向する投資のことです。

 

そのメリットとは

・定期的に収入(インカム)が得られる
・配当金を再投資することで複利運用効果を得ることができる

一番のメリットは「保持しているだけでインカムゲインを得ることができる」点です。
米国株であれば3ヶ月に1回、日本株であれば半年に1回定期的に収入を得ることができます。(銘柄によっては毎月配当金が入るものもあります)

 

不労所得に憧れる投資家も多いと思いますが、インカムゲインはその際たる例です。
また手に入れた配当金は再投資することで、元本+配当金(+買い増し資金)となり、
元本をそのまま保持する、あるいは単に買い増しするよりも早く資産が拡大します(複利運用効果)。

 

2.そもそも配当とは
配当(配当金)とは
企業が株主に「利益」を分配すること
です。

このため「利益」が計上されていることが前提となります。一部決算結果が赤字であっても無理に配当を出したり、借金をしても配当を出したりするケースもあります。

なぜここまでするのかは後述します。

 

配当金は「株主に対する利益還元」という効果があります。

企業が株主に利益を還元するのは
・課税対象となる企業の内部留保を少なくする
・株価下落を阻止する(株を保持するメリットを株主に提示することで、売却を防ぐ・さらに購入してもらう)
という2つの狙いがあります。


このため、特に米国企業は「株主への利益還元度合い=当該企業への評価」という傾向もあり
・連続増配企業(配当金を毎年増加している企業)
・○○年連続配当企業(いかなる状態であっても配当を出している企業)
・高配当企業(配当利回りが高い企業)
といったところに人気が集まりやすいです。

 

一方で企業が株主に利益を還元する方法は配当だけではありません。
・設備投資、事業拡大による収益増加
・自社株買い(企業が市中の株を買い取ること)
という方法で利益を還元することも可能です。
実は配当は企業が株主に利益を還元するための「奥の手」と言えます。

 

3.バークシャー・ハサウェイが配当を出していない(と思われる)理由
ウォーレン・バフェットがCEOを務めるバークシャー ・ハサウェイ社は「配当を出していません(無配)」また、バフェットが企業を評価する基準に「自社株買いをする企業」は入っていますが、「配当が多い企業」はありません。先程の「奥の手」の話に絡めてこの理由を説明します。

 

企業があげた収益は何もしないと「内部留保」としてストックされます。日本だとよく叩かれますが、アメリカの場合、内部留保としてストックしてしまうと「税金面で不利」になってしまうため何かしらの形で内部留保としてストックしないように働きかけます。

 

伸び盛りの企業の場合、ガンガン設備投資を行ったりM&Aを行ったりして収益を「自社の拡大」に振り向けます。こういった取り組みをするのはIPOしたばかりであったり、上場10年以内の若い企業が多いです。


このため、配当を出さずに設備投資に振り向ける企業の大半はバリュー投資の対象外となるケースが殆どです。(GoogleFacebookなど例外はあります)

 

設備投資などが一段落した成長企業は、規模が拡大し株主が増えてくることから「株主還元」を意識するようになります。
この時企業は
・自社株買い
・配当
のどちらか(あるいは両方)を選択します。

 

自社株買いは企業が株を買い取るため
・EPSの向上(EPS=当期純利益/発行済株式数なので買取をすることで分母が小さくなる→EPSの数字が上がる)
・株価の向上(EPSが上昇することで、その企業の収益成長性が評価されるため)
の効果が生まれます。

つまり「自社株買い実施→株価上昇→上昇により株主の含み益(売却すれば譲渡益)」が増えるメリットが得られるのサイクルが生まれます。

このためバフェットは自社株買いを積極的に行っている企業を高く評価しています。
バークシャーはそれほど自社株買いをしているわけではありませんが。。。

 

自社株買いは保持しているだけで、持っている株の評価額が上がるのでメリットが大きいというわけです。

 

でも自社株買いは企業の株価が上昇すると当然ながら実施するために多くの資金が必要です。資金が必要となるけど株主に還元しないわけにはいかないので、企業によっては借金をしてでも自社株買いを行います。

 

自社株買いによる株主還元だけでは限界が見えてきた場合、「配当」を出すようになります。


これが「配当=奥の手」と書いた理由です。

 

配当が奥の手である理由はもう1つあります。
配当は1回出すと「毎期必ず配当すること」が求められます。配当が減少したり(減配)、ストップしたり(無配転落)すると評価が下がり、株価が下がってしまいます(例:クラフト・ハインツ、日産)。一度切ったカードは簡単には引っ込められないのです。

配当は言い方を変えると企業の成熟の証でもあり、後が無いカードを切ること(=成長性の限界)でもあるのです。

 

バークシャー・ハサウェイはまだ成長余地があり自社株買いメインで十分に株主に利益を還元できる自信があると考えているものと思われます。

 

ここまでは企業からの目線による配当の解説です。

 

4.配当の致命的なデメリットとは?
ここからは株主の目線で配当を解説します。

・自社株買い
・配当
どちらも株主へ収益を還元する方法ですが、株主から見た場合どちらにメリットがあるでしょうか?

答えは「自社株買い」です。

 

自社株買いと配当の最大の違いは「徴収される税金」です。

 

・自社株買い:株価が上昇するが売却しない限り税金は取られない(利益は100%株主のもの)
・配当:配当金をもらう段階で既に税金(20.315%、外国株の場合さらに+10%)が取られている
(※NISA口座の場合税金は取られないですが、NISA口座で購入できる株数は限られているので考慮しないものとします)

 

配当は「受け取りを拒否できない」ため、毎期強制的に税金を取られていると言い換えることができます。
無配で自社株買いを積極的に行っている企業は、株主還元の収益を100%を享受できるのに対して幾らか利益が削られていることになります。

 

しかも利回りの高い企業や連続増配を行っている企業は
・配当の引き下げ(減配)
・配当の取り止め(無配)
を選択した時点で株価が大幅に下落するリスクを抱えています。
(自社株買い企業も下落リスクは抱えています)

 

5.銘柄を選ぶ際に配当を優先しない方が良い理由
高配当銘柄や連続増配銘柄には減配、無配による株価下落リスクがあることが分かりました。これを踏まえると銘柄選びの際に考慮しないほうが良い要素があります。
それは「配当利回り」です。

 

配当利回りの高い企業は「株価が安くなっていて、高配当」という特徴があります。
コロナショックによって株価が大幅に下落したことで10%近い配当利回りとなった銘柄も出てきています。

 

しかし、配当利回りが高い企業はそもそも株価が低い傾向があるのですが、株価が低いというのは
・収益性に問題がある
・財務状況に問題がある
・将来性に問題がある
・何か特殊な要因により株価が下がっている
ということでもあります。

 

一番最後の要因「だけ」で株価が低いということであれば高配当銘柄かつバリュー投資先の候補として魅力的であると言えますが、それ以外の要因が関係してくる場合、「株価が伸び悩む可能性」があります。

 

配当金は高いもので株価の5%程度です。

 

つまり配当金(インカムゲイン)をそれなりにまとまって貰えるようになるには最低でも1000万円近い投資元本が必要です(単純計算で1000万の投資元本で年間50万円の配当益)。

 

日本の場合、配当金に税金(20.315%、外国株の場合30.315%)がかかるので配当金を再投資するにも税金が引かれた状態から始まります。
(なお海外の証券会社には「DRIP」という配当金自動再投資システムがあり、税金がかかりません。高配当銘柄・連続増配銘柄に人気が集まるのはDRIPを使って効率よく投資元本を増やすことができる点も大きいと思われます)

 

株式投資の場合、収益を高めるには「株価の上昇」が欠かせません。
配当金が魅力的(配当利回りが高い)であっても、
・株価が伸び悩んでいる
・まして下落傾向である
企業に対して長期投資を行うと最終的な収益が伸び悩む危険性があります。
株価が下落した場合、含み損を抱え続けることになるので配当金はもらえますが、簡単に売却できなくなります。

 

さらに株価が伸び悩んでいるということは企業の経営状況が悪化している可能性があり、良い材料がないということで減配・無配転落のリスクも潜んでいます。

 

つまり、成長性の低い高配当銘柄への投資はリスクが高いと言えます。
銘柄を選ぶ際に配当を優先しない方が良いということです。

 

<配当を出している企業を選択する際にチェックした方が良い部分>
例えばアップルやマイクロソフト、VISAといった企業は成長性の高い企業ですが、配当を出しています。また、コカコーラやP&G、JPモルガンのように「高配当銘柄だけど、収益性も高い」企業もあります。

 

大事なのは単に

配当利回りが高いから」

「配当金が高いから」

購入するといった選択をしないことです。

 

ではどこを評価するべきでしょうか?
・成長性、将来性:企業の取り組みを含めて、将来株価が上昇する材料があるか
・配当性向:配当性向が高い企業は収益に対して配当を出し過ぎているということなので、どこかで無理をしている可能性が高い
キャッシュフロー:配当の源泉になるキャッシュフローをコンスタントに稼ぎ出せているか
これらを評価した上で、購入銘柄を選択した方が適切です。

 

以上です。ご覧いただきありがとうございました。