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【書籍紹介】逃げて勝つ 投資の鉄則 大負けせずに資産を築く10年戦略〜マクロ目線の投資戦略とは?〜

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https://www.amazon.co.jp/dp/B08NJL1ZKS/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_X92HQ3DKRZ0VNX0DPM0T

 

田中泰輔さんの著書「逃げて勝つ 投資の鉄則 大負けせずに資産を築く10年戦略」について紹介します。

 

田中泰輔さんはTwitter(@tanaka_taisuke)や楽天証券トウシルでも動画配信しています。

中長期目線での投資戦略を米国株を中心に解説しています。非常にロジカルです。

 

著書の内容は逃げて勝つというタイトルにある通り「出口戦略」にスポットを当てています。巷の投資本はいかに買うかの解説がメインなので売ることを念頭にした著書は異彩を放っています。

 

単にどう売るかを解説したものではなく、

・経済トレンド、景気サイクルを軸としたマクロの目線で説明している

・短期から超長期までの様々な投資戦略に合わせた解説をしている

・一般的に景気サイクルが循環する10年スパンでの構えかたを解説している

といった特徴がありマクロ戦略においてはかなりの良書と言って良いと思います。

 

長期投資を基本戦略とした投資関連本は多いですが、心構え・マインド中心であったり一見汎用的なやり方に見えて実は結構特殊なものであったり、好調時を基準とした戦略であったりと現実の投資にそぐわない点がある本がほとんどです。

 

またバフェット・ピーターリンチ・フィッシャー・シーゲルなど長期投資の著名投資家の本は古典化しているため、現在〜今後見込まれるマクロ経済の実態との乖離が激しく、参考にするには読み替えが必要であったり、実践できない部分を飛ばして考えるなど手間がかかります。

 

長期投資は2つのやり方に分かれます

・バイアンドホールドを前提とし、基本的に売却しない

・一定の基準を満たさない場合、売却することを前提とする

保持することを前提とするか、売却することを前提とするかの違いがあります。

田中氏は後者です。

 

これは長期投資をマクロ目線で捉えた場合、必ず逆風(大幅な価格調整、暴落)を受ける場面があるためなるべくこれを回避したほうが最終的なパフォーマンスは良くなると考えるからです。保持派は逆風を正面から受け止めて、株式は長期的にみて右肩上がりであることを信じて投資するというスタンスです。

 

つまり、どこかでやられるのであれば、経済動向・景気サイクルの転換点を把握した上でその兆候が見えたら先に逃げて(利益確定をして)逆風を凌ぎ、風向きが変わったら再び投資をするというのがこの本のポイントです。

 

さらに

・超長期投資(20年以上のスパン)

・長期投資(5年〜10年スパン)

・中期投資(半年〜5年スパン)

・短期投資(デイトレード〜半年スパン)

はそれぞれ波の大きさやトレンド転換時期がズレるため、このズレを活用して複数の投資スパンを組み合わせて、さらに投資先もサイクルが異なるものを組み合わせる戦略を提唱しています。

 

この本最大の特徴は「資産の大半が円である日本人が長期投資を行うこと」を念頭に置いている点です。これは結構盲点で、海外の投資家が書いた本は当然自国を基準にしているため主にアメリカの投資施策や投資ルール・税金ルールが暗黙の了解で書かれており、日本との違い、とりわけ「円とドルの違い」を念頭に置いて学ぶ必要があります。

 

円は「あまのじゃく」と表現しており、過去何度も投資家を悩まされた「根拠不明瞭な円高」「有事の円高」による、「他の国では起き得ない損失ポイント」への対処方法が解説されているのがこの本を読むべき最大の理由だと思います。

 

日本人が投資する場合

少子高齢化で成長産業が少ない日本株を軸とした投資では長期リターンが損なわれる

・このため、投資の軸はアメリカをメインとした海外株にせざるを得ない

・だけど海外株を売却する際に、円高が進行しているとリターンが削られてしまうため株式投資のパフォーマンス以外に為替動向とそれを左右する経済動向をフォローする手間をかけないといけない

という壁にぶつかります。この問題への対処法が解説されています。

 

ただ解説の基準が10年サイクルの経済動向・景気動向なのでこの辺が不得手の方や初心者にはハードルが高いのが難点です。

 

丁寧に読み込むと非常に参考になる部分が多いです。

特に「超長期投資」の部分はかなり有効だと思います。

 

というのも例えばつみたてNISAをやっている場合、最大20年間投資することになりますが何にどう積み立てるかの解説は多いものの、「20年後どうするか」についてはあまり解説されていないことが多いです。20年経った時にリーマンショックやコロナショック級の大幅な暴落があった場合積み上げたものが無駄になってしまう危険性があります。

 

しかも積み上げた時間は取り戻せないので、せっかく淡々と長期間投資できたとしても最後の最後でしくじってしまうのはとても勿体無いです。

 

マクロ経済目線で、トレンドの転換点や逆風が吹く局面を理解しておきその前兆を感じたところでポジションを整理するなど調整できればいいよねというのがこの本の主眼です。

 

言うほど簡単ではないことではあります。でも「長期・積立・分散投資=安全・安心ではない」と理解しておくだけでも構え方がだいぶ変わってくるので、長期投資をするのであればその気づきを得るためだけでもぜひ読んでおくべきだと思います。

 

短期〜超長期全ての要素を著者が述べている考え方でテキパキ実践するのはかなりハードルが高いですし、著作で書かれているのは2020年〜2030年ごろまでなので特に2025年以降のマクロトレンドの予測は外れる可能性ももちろんあります。

 

大事なのは

・マクロトレンドが転換するキッカケ、要素を掴むこと

・マクロトレンドが主にどう推移するかを掴むこと

・各国の経済動向、特に「ドル」と「円」が及ぼす影響を掴むこと

こういった点が「気づき」を増やし、長期投資の成功率を高めることに繋がると思います。

 

いつかは分からないが逃げることを前提にしているため、バイ&ホールド派からすると納得のいかない部分が多いです。でも例えば先ほど書いた通り

・超長期投資:逃げ時をしっかり考える

・中、長期投資:バイ&ホールドを前提になるべく保持期間を伸ばす

といった使い分けをしても良いと思います。

 

投資信託、成長株、インカムゲイン狙いの株式やETFなど購入するものによっても戦略は変わってくると思います。インカムゲイン狙いの投資は投資資金をホールドしてそこから落ちてくる配当金をなるべく増やして潤うことなので売ることよりもいかに増やすかが大事になってきます。この場合マクロトレンドを学ぶのはあまり馴染まないかもしれません。

 

新興国株式投資

・成長株やトレンドを重視した投資

に感じてはうまく逃げることがパフォーマンスを左右するので「逃げ方を学ぶ」ことは非常に有効だと思います。

 

自分自身の投資戦略を整理するきっかけになる本だと思います。繰り返しになりますが、長期投資をやるのであれば一読することをお勧めします。