公認会計士KYさんの著書「元証券ディーラーが長期放置で2倍4倍にする方法」の解説です。
この本は
・長期間投資をして収益を稼ぐ売買方法
・長期放置をして2倍、4倍になる銘柄の見つけ方
について解説しています。著者は証券ディーラー出身で、主戦場は短期投資ですがそこで学んだことや先輩から影響を受けたことを長期投資に応用させています。
最大のポイントはこの本の帯にある
買う→放置→ちょっと売り→永遠に放置して4倍→X倍
です。この動きは「恩株」の効用を説明したものです。
恩株とは
1.株価が購入価格の2倍になったところで半分売却する
2.この時点で購入した時に投資した資金は回収済みとなる(これが重要)
3.残り半分はそのまま放置して好きな時に売却する。最悪この残り半分がゼロになったとしても元々投資した資金は手元に残ることになるので損失はゼロ
という投資方法です。
半分売却するタイミングは2倍でなくても良いのですが、投資元本を先に回収することが重要なので2倍、ダブルバガー達成が恩株化のタイミングとしておいた方が良いと思います。
言い方を変えると恩株化作戦は「ダブルバガーが狙える銘柄」が対象になるということです。短期間に達成する必要はないので例えば「5年で2倍」というじっくり型の銘柄でも活用できます。
恩株のメリットは
・最大損失がゼロである
・残した半分はいつ売却しても良いし、放置したままでも良いので「安心感」が得られる
・利確タイミングに悩むことがなくなる(残り半分の売却タイミングは悩みますが、損失の不安がなくなるのはそれだけでも十分なメリット)
・上手くいけばテンバガー銘柄に巡り合うことが可能
デメリットは
・日本株の場合、最低2単元購入する必要がある(半分売るため)
・ダブルバガーになる銘柄を探す分析力が問われる
・時間がかかる
・理論上は半分売却しないほうが狙い通り成長した場合の収益が大きくなる(最大収益を削って安心を得るイメージ)
この本の大半は恩株化して長期放置に耐えられる銘柄を探す方法について書かれています。といっても特殊な方法ではなく日経新聞などで情報を得て、キャッシュフローが黒字で伸びている銘柄を探し、PERが低いタイミングで購入するといったオーソドックスなものです。
ダブルバガー超えを果たすような良い銘柄、成長性の高い銘柄を探すのが好きな方・得意な方は個別銘柄を安心しながら投資するやり方としてこの本はとても有益だと思います。
いわゆる配当銘柄や値動きの大人しい保守的な銘柄だと2倍達成までにかなり時間を要します。
恩株は個別株にとって大敵な「心理的不安」へのケアとして有効な方法です。
先ほども述べた通り理論上は半分売ってしまうよりも、全て残して長期投資した方が得られるリターンは大きいです。でも利益が確定していない状態で大きな調整や暴落を気にしてしまうよりも最低限投資元本は回収して、安心が持てるのは投資家心理として極めて理に適っています。
長期投資メインの投資本で恩株の有効性を説明した本はこれまでなかったので画期的と言えます(バイアンドホールドの有効性を説明する本は多いです。これは銘柄選択の保守性を高めることを優先しています)。
ただ恩株化に適した銘柄のスクリーニング基準はそこまで細かくは書かれていないので、初心者向けではなくある程度経験し長期投資志向であることを自覚した方向けの本だと思います。