個人的にはどういった投資方法であれ、その投資方法の特徴を理解した上で正しく実践しているのであれば特に批判されるものではなく、あくまでその人の中で利益が最も挙げられる投資法であればそれが最適と考えるようにしています。
ただ得手・不得手はあると思います。私は不得手なものは理解が難しく、それゆえに凡人以下の振る舞いをしてしまうこともしばしばあります。今回はそんなお話です。
先日とあるバリュー投資家の方と会話をする機会がありました。
バフェットを信奉している方でバフェット「的」なバリュー投資を志向している方です。
脱線しますが個人的にバフェットの投資法に関しては
ここで述べた通り、ホールドアップしています。バフェットの投資哲学や人間性は非常に好きですし、考え方や投資スタンスは非常に勉強になると思っています。
脱線終了。
バリュー投資家の方と投資スタンスについて話をしたのですが
・評価損に対する考え方
・買値に対する考え方
で噛み合わないといいますか、モヤッとしたものを感じました。
そのバリュー投資家の方は
・自分が納得した買値で買ったのであれば、仮に株価が買った時より下回っても損失だと思ってはいけない
・評価損はあくまで評価損であり、実損ではないのだから損失は気にせず持っておいた方が良い
という考え方でした。これはバフェットの投資法における「良い銘柄はずっと抱き続けるべき」「売買すると手数料・税金が取られるから安易に売買するべきではない」といった部分からきているように思われます。
言っている事自体間違ってはいないと思います。
ただそれは「買値が(ある程度)正しかった場合」に限られると思います。
バリュー投資のポイントは
・長期的目線で良い企業と評価できる企業に投資すること
・購入対象銘柄の真の企業価値(バリュー)が分かっていること
・バリューに対して株価が下回っている状態で購入すること
です。
なので買値と企業価値評価にはシビアになることが求められます。
このため企業価値をなるべく正確に見極める力(知識・経験・情報量)が必要です。バリュー投資家を名乗っている方で、特に企業の財務情報・ROICなど企業収益に関連した指標値をしっかり計算して数字を見極めることを重視している方は日夜企業のバリュー分析に時間を割いています。
徹底したバリュー分析ができるかどうかがバリュー投資の正否を決めると言っても過言ではありません。
ただ、個人的には突き詰めて分析研究することに興味が持てず、分析の時間も割けないという判断が働いたこともあり、バリュー投資を実践して思うように収益が伸びなかった経験もあり、バリュー投資の優先順位は落ちています。
話を戻すと買値が正しいかどうか、その判断精度を高めるためには様々な材料を分析して突き詰めて判断の裏付けをしないといけないのにもかかわらず、件のバリュー投資家は適切な買値の裏取りについてさほどこだわりがあるようには感じられませんでした。
実は裏でもう少し突き詰めて分析しているのかもしれません。
でもその投資家がやっているのはEPSやROE、キャッシュフローなどの過去の数字を分析してそれを元に投資対象先と買い値を決めているとの話だったので、突き詰めたところまでシビアに買い値を見極めているというよりは「バックミラーを見て問題がなければ投資する」というやり方をしているようでした。
個人批判になってしまうのですが、その方は教科書的な理論ありきで話をされていて、良い印象を持たなかったこともあり、腰を据えて議論しても不毛だと判断して、納得した風な返しをしてその場は会話を切り上げました。
<まとめ>
雑多な話になってしまいましたが、モヤッとしたのは
・人間はどうしても感情には逆らえないので理屈で分かっていても評価損を気にしてしまうもの。なのにそれをバフェット「的」バリュー投資の理論・理屈が上回る理由が分からなかったこと
・先ほど述べたように買値の判断が正しくないといくらホールドしても、最終的な収益には繋がらない。いつまで待てるものなのかが分からなかったこと
・個人投資家は投資資金と投資にかけられる時間に限りがある。その前提を無視して「評価損は無視してホールドし続けること」が本当にできるのか疑問だったこと
です。
これらはバフェットなどのバリュー投資家(バフェット=バリュー投資家とするのはやや抵抗があるのですが)が莫大な収益を挙げたことに依存しているものと理解しています。
バフェットが成功したのだから、成功したバリュー投資家が実践しているのだから、それを踏襲すれば上手くいく。そう信じて疑っていないから出来るのかなと思うのですが、個人投資家は目標達成までにタイムリミットがあります。
人生の最終盤で莫大な利益をあげてもそれを活かす事ができずに終わってしまうかもしれない。そういった恐怖感のようなものがあります。
投資は不確実なものです。良い企業を良い買値で買ったと思っても巡り合わせが悪い・分析が不確実で投資ストーリーが間違っていた等の理由でなかなか上手くいかないケースも当然あります。
なのに成功者の理論・理屈がバイ・アンド・ホールドだからといって、「自己判断で」納得した買い値を信じて「いつか上がるはず」と保持し続けて良いのかという疑問が拭えませんでした。根拠が少々脆弱ではないかなと。
それなら株価チャートの方が今を映している(見方を変えれば将来を映している)ものですし、決算結果はその企業の今を忠実に反映している確固たるものです。確固たるものを信じて勝率の高い投資をコツコツ続けた方が理に適っていると個人的には思います。
また、バフェットはバリュー投資で莫大な財産を築いたと言われていますが、実際は個人投資家では到底できないような手法(裁定取引・M&A・保険料収入を投資資金に回すなど)も駆使している「実業家」です。実業家ウォーレン・バフェットだからこそ、ここまで成功したと私は思います。
優秀な実業家だからこそ投資対象・買い時を見極める目を持っているということです。さらにチャーリー・マンガーという稀代のファンドマネージャーが右腕についています。そういった方々が行っている超ハイレベルな投資方法の一部(公開されているのは一部の手法だと思います)を個人投資家がかじっても上手くいかないのでは?そんな疑問を最近持つようになりました。
バフェット「的」と表現しているのは、一般に広まっているバフェットの投資方法は一部分の話であり、過去のバフェットやマンガーの発言から導かれた解釈をベースに構築された投資方法でしかなく、正確なバフェットの投資方法ではないと思われるため、そう表現しています。
バフェット「的」バリュー投資家との会話を通じてその疑問が確信に変わったところもありました。それがせめてもの収穫だったのかなと思います。
繰り返しになりますがバリュー投資の手法自体は否定しないですし、いずれはバリュー投資優位の時期が来るのでその時に備えておく必要はあると思います。投資法に思い込みは禁物。そこだけは忘れないようにしたいと思います。