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米国株デビュー講座を再読する〜第4章 企業の成長と資本の関係〜

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じっちゃま(広瀬隆雄氏)の米国株デビュー講座を深掘りするシリーズの第4回目です。ここで折り返しになります。

 

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今回は「企業の成長と資本の関係」です。

 

※記事中からの引用は斜体で記載しています。

 

 

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前回は株価を決める要素を説明しましたが、ポイントは良い企業や急成長している企業は株価が上がりやすく、割高になりやすいという説明をしました。

 

一方で企業が成熟してくると成長率は鈍化し、株価の目覚ましい上昇は期待できなくなってきます。

 

普通、どんなに素晴らしい会社でも、事業規模が大きくなると成長率は鈍化するものです。これはその会社の規模が毎年大きくなると、その分だけ前年比較を計算する際の分母の数字が大きくなることが一因です。

 

理屈から言えば、その場合の株価評価も、成長率の鈍化とともにだんだん下がってきます。これを株価の伸びから見れば、企業が成熟するに従って、昔のような倍々ゲームでのキャピタルゲインが望めなくなることを意味します。

 

成長性に期待して投資する場合、成長幅や伸び率の鈍化は「投資行動の縮退」を意味します。つまり積極的に投資しようという先から外れてしまうことを意味します。

 

普通、若い伸び盛りの企業は、稼いだ利益を本業に再投資することが最も効率の良いおカネの使い方です。しかし、だんだん前と同じような投資リターンを期待できなくなれば、経営者は他の方法を考えなくてはならなくなります。

そこで登場するのが、自社株の買い戻しや配当という形による株主への利益還元の方法です。

若い企業、IPOしたばかりの企業はピカピカのストーリーによって注目を集め、実績を挙げて良い決算を出した結果、投資家の信頼を集めて株価が上昇します。

ところが実績をつけていくとポジティブサプライズは期待できなくなります。難しいことなのですが「クリアして当たり前・成長を示して当たり前」となっていきます。驚きがなくなると次々に投資するということにはなりません。

 

新たに投資家を惹きつける材料が必要であり、それが

・自社株買い

・配当

ということです。

 

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以前に私が解説したこちらの記事にも自社株買い・配当の仕組みと理由を載せていますのでよかったらこちらもご覧ください。

 

<自社株買い戻しについて>

企業は通常配当よりも自社株買いを優先します。

 

 その第1の理由は、自社株の買い戻しが毎年必ず実行しなければならないものではないからです。儲(もう)かった年に自社株を買い戻す、次の年には余裕がなければ止める……そういうことが自社株買い戻しでは常識になっています。つまり自由が利くのです。

企業にとって都合が良いというのが一番の理由です。

 

自社株の買い戻しは、EPSを改善することに加えて、実際に市場へ買い注文を出すので、目先の相場の需給関係を良くするという効果もあります。

 

EPSは決算での評価材料となる重要な指標。これを改善することは非常に大事です。

 

<配当について>

次に企業の成長率がもっと下がった場合、自社株買い戻しではなく、配当を払うという方法で株主に利益を還元することが行われます。

 配当の場合も「一度配当を支払い始めたら、それをやめてはならない」という法律はありません。だから、自社株買い戻し同様、ムリになればいつでもストップして良いのです。

成熟度が増した企業は利益を株主に直接還元する配当を開始します。

 

ところが

 

一度配当を出し始めた企業が減配、ないしはそもそも配当自体をやめてしまうと(そのことを「無配転落」と言います)、とてもイメージが悪いのです。

 

配当は止められない・止まらないという特徴があります。企業の都合以上に株主還元を優先する対応なので、止めたり株主の都合に合わない状態になってしまうと企業にとってはダメージになってしまいます。

 

つまり配当の場合、(一度始めたら、継続してやるものだ)という暗黙の了解があるのです。すると企業は、しっかりと今後未来永ごうにわたって、配当を出し続けられるようなメドがちゃんと立ってから、配当を出す決断をします。こういった事情で配当を出し始めるのは、自社株買い戻しよりもずっと後になるのです。

 

安易に配当は出せないということです。こうした特徴があることから配当を出す・出さないで分かることがあります。

 

意地悪な見方をすれば、配当を出し始める企業は、もはや急成長企業ではなく、安定成長株だというふうにも言えます。人間の一生に例えれば、壮年期というわけです。

 

稀に例外もありますが、配当を出すことを決断するということは

・投資家を惹きつけるための材料が尽きている、あるいは目覚ましいインパクトを与えるものではない

・設備投資などを一通りやり尽くしているほど、大きく成長している

・ライフサイクルの成熟期に入っていることの証

ということです。

 

配当を出し始めたばかりの企業はまだ成長期の段階にあるケースもありますが、配当利回りが上昇したり配当性向が高くなるような企業は年季の入った熟練の企業、壮年期であるということです。

 

壮年期の企業は株価の成長率も大人しいもの(これは必ずしも悪いことではなく、安定して値動きが読みやすい安心感を与えている側面もある)なのでポートフォリオへの組み込み方に注意が必要です。日本は高配当株企業への評価が高い傾向があるため、資産ポートフォリオの中に高配当株を積極的に組み込む方も多いですが、配当の特徴を踏まえてきちんと評価した方が良い事がわかります。

 

優等生企業の場合、もう何年も「勝ち組」であり続けているため、IPO(株式の新規公開)したばかりの企業の中でも、ごく一握りの企業が見せるような華々しい急成長は望み薄だということです。つまり、急成長ではなく、安定成長なのです。イメージで言えば、売上高は年率7%、EPSは年率10%で成長するという感じです。

 

こういう事ですね。繰り返しですが、安定成長銘柄を組み込む事自体は良いと思います。じっちゃまも大賛成しています。

 

こういう銘柄はバタバタ売り買いしても、あまり儲かりません。つまり、時間を味方につけ、じっくりと長期で株価が上がるのを待つ方がベターなのです。

 そもそも、EPS成長などの面で投資家にあまり報いることができないから、利益を配当に回すわけですから、投資家としては「もらえるものは、しっかりもらっておこう」という主義を貫かなければ意味がないのです。

 

高配当株を長期投資として購入するのは理に適っているという事です。

つまり成長性を享受できるグロース銘柄に対して、安定成長銘柄は不安定なグロースの伸び率の代わりに、配当をもらって収益をプラスすることに意味があるということです。さらに「配当が安定していること」が重要なわけです。

 

米国の企業の場合、四半期ごとに配当が支払われます。だから、売ったり買ったり、せっかちなトレードを繰り返している間に、配当をもらい忘れたりすることがしょっちゅう起こります。そのため、安定成長している優良株をむやみにトレードするのは禁物です。

 

何十年も成長を出し続け、利益を稼ぎ出し、配当を払い続けてきた企業は、よっぽどのことがない限り、経営がグチャグチャになることは稀(まれ)です。優良株に接する際は、じっくりと長期で株価が上がるのを待つ、辛抱のキモチが大切なのです。

 

安定成長株への投資において心がけるべき大事な事がまとめられています。

言い方を変えればホールドすべき良い銘柄を見抜く必要があるという事です。

 

IPO直後の新株公募>

IPOして半年~1年後すぐに、また株を売り出す会社があります。このようなケースをどう評価すれば良いのでしょうか?

 

これはIPO銘柄以外にも最近だとワクチン・SaaS・巣篭もり関連の銘柄で公募が相次いでいます。公募は投資会社が設定した値決めによって株価が動くため、人によってはネガティブな反応を示す方もいます。公募に関してのじっちゃまの見解が述べられています。

 

こっそり皆さんにお教えすると、IPOして間もなく公募増資に踏み切る会社の株は「買い」です。

 

これはIPO直後に公募することは簡単なことではないからです。

 

詳細は記事をご覧いただきたいですが、IPO後の決算がずっこけた企業が資金ショートした際にPIPEsと呼ばれる私募による資金調達をせざるを得ない事情が解説されています。あまりよろしくない状況なのでPIPEsをするような企業は「売り」と言っています。

 

IPO直後の公募に関して伸び盛りの企業が公募した場合、株価が高くなっていることから資金調達コストが少なく済むため、結果的にポジティブな方向に作用するとテスラの例を使って説明しています。テスラの株価上昇に関しては2011年に28ドルで公募したものが2020年8月に1500ドルを越えていることから分かると思います。この間に3回公募しています。

 

これは、育ち盛りの子供がどんどん栄養をつける必要があるのと同じで、むしろ株を出して資金を調達し、それを本業に突っ込むことが、会社にとっても、株主にとっても、最も理にかなっていて、それ故に安全な資本政策である好例です。

 

子供の成長スピードはものすごいものがありますが、それを支えるのは栄養(資金)と運動(企業活動)です。どんどん資金を増やし、体力をつけるために企業活動を積極的に行い企業は成長していくということです。

 

だから、公募増資の値決めが済み、その後、場で取引されている株価が公募価格を割り込まないことを確認できたら、再び強気で買い向かってOKです。

 

公募価格を割り込まない事がポイントです。

 

<投資資金から考える銘柄選択>

通常、株式投資を始めたばかりの投資家は、投資資金が限られています。数十万円から、せいぜい百万円くらいの資金のケースが多いと思います。

その場合は、あまりたくさんの銘柄に投資することはできないと思います。

一つか二つ程度の銘柄だけに投資する際は、IPOしたばかりの若い会社に全財産を投入するのではなく、大型株の、優良企業に投資するようにしてください。

例として

・コカコーラ 

・P&G

マクドナルド

ベライゾン

などを挙げています。値動きが分かりやすく、どんな局面でも大きくは凹まない銘柄です。コロナショックでは下落しましたが、業績が大きく凹んだわけではなく株価も回復しているものが多いです。読みやすく安定しているので、投資資金が限られている段階においては最適なわけです。

 

もちろん、業績が安定していて配当も出しているからと言って、これらの株を買うと必ず儲かるというわけではありません。

 でも、慣れないうちは株価の動きがマイルドな、これらの銘柄で練習するのが一番です。

必ず勝てるわけではないですが、大きく凹むリスクが少ないため慣れるにはもってこいというわけです。

 

もちろん、投資資金が限られているうちは個別銘柄ではなく、ETF(上場投資信託)を買うという方法も有効です。

 

何を買ったら良いか分からないうちはETFを買って練習し、その間に企業分析を進めて投資に最適な銘柄を探すというのも良いでしょう。

 

一方で

 

IPOして間もない若い企業への投資は「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」式の、試行錯誤の繰り返しにならざるを得ないのです。

 すると、この手の若い企業は、1回きりの非課税の特典を享受できるNISAのような口座での保有には向かないことが、お分かりいただけると思います。

 

若い企業、成長企業は波があるため当たり外れがあるという事です。こういった企業を資金が乏しいうちに集中投資するのは「市場から退場する」リスクを抱えることになるので初期段階ではオススメしないということです。

 

NISAは一回売却するとその年の非課税枠は復活しないので、上手くいかなかった場合に売却する必要がある若い企業への投資にNISA枠を使うのは望ましくないということです。