資産運用の原理原則を分析するシリーズの第一回目。今回は現金について扱います。
・現金保有比率
・貯蓄額
は資産運用を行う上で常に悩ましいネタです。
これは
・現金はいくら貯めてもなかなか増えない
・突然必要になる時にないと困る(生活防衛資金問題)
・資産したい時に手持ちの現金がないと困る
といったところが悩みの種になるからではないかなと思います。
普通預金、定期預金の利率は微々たるものです。銀行の預金利率は一番条件が良いネット銀行の定期預金で0.2%です。0.2%は年率です。インデックス運用の年率は3~5%程度が平均で良い年は7~8%は期待できるのでそれらから比べると圧倒的に投資効率が悪いです。
さらに現金はインフレ率が一定以上のペースで増加する場合、毎年1~2%物価が上昇するので0.2%の利息では太刀打ちできません。
現金を増やすタイミングはデフレが進行した時(物価が安くなりお金の価値が増加する時)のみ有効です。長期的に見てデフレが進行する時期はほんの一瞬(長くて数年単位)なので資産が増える時期が相対的に短い貯蓄は資産拡大の取り組みには適していないことが分かります。
資産拡大を図るのであれば「フルインベストメント」が最適ということです。
ただフルインベストメントには
・資産暴落に弱い
・暴落時に追加投資ができない
というデメリットがあります。
デメリットを解消する最も良い方法は「毎月の収入を増やすこと」です。
毎月安定的に多くの収入が入る状況ができればフルインベストメント作戦であっても
・資産暴落時に現金収入の支えができる
・暴落時にも追加投資ができる
というわけです。
ここで重要なのは「安定的」ということです。
暴落局面で収入がパタっと落ちてしまうようだと意味がないです。
例えば「配当金収入」を毎月の収入のベースにするのは、暴落時に減配・無配のリスクがあるので安定性は保証できないです。収入のベースの一部としてであれば問題ないですが。
最適な貯蓄法その1は「毎月のキャッシュフローを増やす取り組みをする」です。
これはスキルアップを図る、金融資産以外の投資をする、副業をするといった取り組みが該当します。
次に「突然お金が必要になった時」の対処方法です。
フルインベストメントをしていると突発的にお金が必要になった時に困ります。
投資信託や株式・債券・実物資産はいきなり現金には変えられません。数日かかります。
また、せっかく貯めた資産が現金が必要になった時に暴落していたとしたら・・・目も当てられない状況ですね。
「生活防衛資金が必要」というのはこういった状況に陥らないために用意するものです。
人によって意見が分かれますが、私としては
「ごく最低限のお金は用意しておいた方が良い」
と考えています。
人によっては生活費6ヶ月分〜1年分という意見もありますが、これは
・投資資産総額
・配当など金融資産から得られる収入
・毎月のキャッシュフロー(収入)
の3つがあれば資産のベースは既にできていると考えればよく、現金として用意しておくのは「当座の資金〜多くても生活費3ヶ月分」あればOKと考えます。
最適な貯蓄法その2は「資金を貯め込みすぎない」ことです。
リスク許容度と年齢にもよりますが、投資のポートフォリオを年齢に応じて調整することで(リスクを過度に取りすぎない、リタイヤに近い年齢になったら債券などの安全資産の配分を増やす)資産構築を優先し、貯蓄の優先度を下げることがポイントです。
どうしてもまとまった資金が必要になった場合は資産を崩すことになりますが、それを過度に気にしないことも大事だと思います。何故なら資産運用を行う理由に「いざというときに困らないようにすること」が含まれているはずだからです。
資産運用も含めてお金を貯めていくという考え方により、無駄な現金を減らすことが大事です。
これまでお伝えしたことから「財形貯蓄の取り組み方」も見えてきたかと思います。
個人的には財形貯蓄は無理にやらなくても良いことだと考えています。
財形貯蓄にメリットがあるとすればそれは「天引きによる家計管理の重要性を体感できる点」だと思います。
資産運用に慣れていない段階、社会人になりたての方などは貯金・貯蓄にも慣れていないので「収入の一部を投資資金にする、資産運用する」という習慣ができていません。
これを解消する方法として財形貯蓄は有効だと思います。財形は給料から天引きしてくれますし、簡単に引き出せないため貯めやすいという特徴があります。ただ再三書いているように現金貯蓄では資産が貯まらないので慣れてきたら財形は止めるかごく少額にして対象を投資信託やETFにシフトした方が良いと思います。
お金を増やすのであれば「資産を拡大してくれるもの」にお金を投じて寝かせておくのが最も手っ取り早いです。貯金・貯蓄は「現金に投資をすることである」という点は忘れないようにしておきたいものです。
また長い人生で現金が勝つ時期もありますが、それは永遠ではない点も忘れないようにしておく必要があります。