SPYD(SPDRポートフォリオS&P 500高配当株式ETF)が話題になっているようです。
SBI証券の米国ETF約定件数・保有人数ランキングでトップです。
<人気の理由>
↑の画像に人気の理由が伺えます。
・高配当である
・購入単価が安い(気軽に買える)
・経費率(信託報酬)が低い
この3点は人気を集めやすい要素です。
配当に関する私のスタンスはこの記事に凝縮させています。
個人的に高配当かどうかは投資の最優先事項ではないのですが、一般的には高配当銘柄はインカムゲインを手に入れるための有力な手段として評価が高くなる傾向があります。
先ほどのランキングでSPYD以外にVYMやHDVといった「高配当ETF」が入っている点から高配当銘柄の人気が伺えます。
SPYDは配当利回り7%を越えています。2019年の年間配当は1株当たり1.74ドル。
購入単価が30ドル前後とした場合、約33万円ほど(1ドル110円前提)で年間配当が174ドル(19,740円)。なかなか悪くないです。
購入単価は2020.4.27時点で
SPYD:26.06ドル
VYM:76.59ドル
HDV:79.59ドル
なので投入金額が少なくても購入可能であるのは特に投資を始めたばかりの方にとっては魅力に感じる部分です。
信託報酬は
SPYD:0.07%
VYM:0.06%
HDV:0.08%
ほぼ互角です。0.01%の差に関しては余程高額投資にならない限りはそれほど大きな差にはなりません。
<商品の特徴>
現時点での構成銘柄TOP10です。
GILDはワクチン開発で話題の企業。ABBV・KHC・VZは高配当でおなじみの企業。CCIのような不動産セクターの企業も入っています。
セクター比率は
金融(金融+不動産):31.60%
一般消費財:16.86%
エネルギー:12.88%
この3つで50%以上を占めます。
いずれも「経済動向によって変動を受けるセクター」である点が評価ポイントとなります。
(参考)
SPYDは「S&P500銘柄のうち、高配当80銘柄を均等配分」したETFです。
・対象銘柄数が少ない(VYMは400。HDVは75)
・均等配分である(他は時価総額加重平均)
時価総額加重平均はほとんどのETFで採用されています。そもそも株価指数も多くは時価総額加重平均です。時価総額加重平均の場合、時価総額(株価×株数)が配分を左右するため売れている株と値段が高い株が上位に来ます。均等配分は配分比率が均等となるため、人気で値段が高い銘柄でもそうでない銘柄でも扱いは同じになります。
これはSPYやVOOなどとも大きく違ってくる点です。SPYやVOOは上位銘柄の依存度が徐々に上がってきており、良くも悪くも牽引役となっています。
ただSPYDは入れ替えが多いです。2018年の構成銘柄にはクアルコムやゼロックス、ターゲットなどがTOP10に入っていました。
<商品の評価>
ポイントは以下の3点です。
・買いやすく、配当リターンが得やすいのでとっつきやすい
・景気、経済の動向に左右されやすい
・入れ替えが多いので今後の安定が保たれるかの保証はない
目を引くのはこの商品「買いやすい」ということです。30ドル前後であればお小遣いを貯金する感覚で積立することができます。コツコツ積み立てて、定期的に利息(配当)を得るというのは昔の定期預金、郵便局の定額貯金のようなイメージで取り組むことができます。SPYやVOOはもう少しまとまった金額が必要となります。
またご褒美的に定期的な配当が得られるというのは
でまとめたことがあるのですが、人間心理として日本人の投資に期待する点からして理にかなっている部分でもあります。
一方で高配当投資は「長期に渡って継続する」ことを前提としています。
配当によって相応にまとまった収入を得るのであれば継続的に資金を投入し購入量を増やして行く必要があり、時間をショートカットできるほどまとまった資金がない限りは相応の期間、投資を続ける必要があります。
となると投資元本を左右する「SPYDの価格」がカギを握ります。
いくら高配当でもSPYDの価格が上昇しない、まして右肩下がりになってしまうと保持するメリットが薄れます。
ここで構成セクター比率が引っかかってきます。金融・不動産は景気変動の影響をモロに受けます。経済状態が悪くなったりリーマンショックのような金融不安が生じると価格に影響します。コロナショックでもSPYDは最悪半減しています。
一般消費財は景気動向の影響を強く受けます。良い時は伸びますし、悪い時はかなり凹みます。エネルギーは今は逆風真っ只中です。配当面でのメリットしか得られません。
重要なポイントはSPYD特有の銘柄入れ替えの多さが、「経済動向や景気に応じて柔軟に<良いところ取り>につながるかどうか」だと思います。
SPYDは2015年にリリースされた商品です。リーマンショックは経験していないですし、コロナショックもまだ起きたばかりで今後銘柄配分がどう入れ替わるかはわかりません。高配当にスポットが当たると価格の上下は関係なく単に利回りが高い銘柄がずらっと並ぶ可能性もあります。
不確定要素が散見される中で長期に渡って配当収入を得るキャッシュマシーンとしてSPYDに託して問題ないかどうかは微妙かなと思います。均等配分・時価総額加重平均の違いよりも「入れ替わりの多さ」の方が気になります。
SPYDをポートフォリオの一部にするのは問題ないと思いますが、主力とするのは不安があります。投資診断士としてコメントするとしたら何かしら株価の下落をヘッジする商品の組み込みについて補足することになると思います。
<高配当ETFのメリットとは?>
私なりのSPYDへの評価をまとめました。
では「高配当ETF」自体はどう評価するべきでしょうか。
SPYDに限らず人気の高配当ETFは「定期的にインカムが得られる」保有メリットがあります。このメリットは人生の後半期において有効になってくると思います。
定期的なインカムがいつ欲しいかというと「仕事をリタイヤした後」「定年退職後」「本業の収入が減少した後」「自分がやりたいことにシフトした後」などメインの収入に依存しない(できない)局面です。
労働収入が減少あるいは無くなった後になると定期的に一定額の収入が入ってくる配当は魅力を帯びてきます。
いわば配当はシールド・クッションとなるわけです。
高配当株投資は個々の銘柄をピックアップすることで好パフォーマンス(例えば、より多くの配当と元本増を達成する銘柄の購入など)が期待できますが、銘柄ごとの毎期の確認が必要ですし減配・無配転落リスクが大きいです。
ETFであれば価格の上昇の期待ができない分、銘柄管理はファンドが勝手にやってくれるので守りの局面においての手間が省けます。どの企業が伸びてどの企業の配当が将来も期待できるかなど分析しなくても保持しておけば良いということになります。
つまり、高配当ETFをある程度ストックが貯まった状態でまとめて購入し、収入の一部分をETFの配当金から得ることで守りを固めるプランとして活用するという考え方です。
このプランの注意事項は配当金の安定性に欠ける(連続増配の保証は無い)点です。ETFの配当は全構成銘柄の結果などに左右されるので、定期的に収入が入ったとしてもどれくらい入ってくるかの保証はありません。なので依存は危険です。
配当金が不安定である点を除けば守りの局面において高配当ETFが支えになってくれます。この場合、選ぶとしたら個人的には経費が最も安く特定銘柄の影響を受けにくい(構成銘柄数が多い)VYMを選択することになると思います。5年・10年・20年と経過してSPYDの傾向が見えてくれば、傾向と特徴を踏まえたSPYDの活用方法も出てくると思います。
SPYDは今の段階だと投資のスタートアップ期や資産形成期に選ぶのではなく、資産成熟期あるいはMY年金として人生の後半をサポートするタイミングで選んだ方が持ち味が発揮できるのでは無いかなと思います。
無論長期間積立をひたすら継続して影響を薄める取り組みをしても良いと思いますが、増やすのに適していない商品は主力ではなくサブに据えるべきだと思います。