例えば
・VOOというETF
という2つのETFがあります。
いずれもS&P500に投資するETFです。
双方の違いは「通貨」です。
VOOは米ドル、1557は円で投資をします。
共に同じ指数に対して投資をするのでパフォーマンスは同じです。ただ通貨が異なるので円に投資をした場合は為替リスクを考慮しなくても良いですが、日本人がドルに投資をする場合は為替リスクが発生します。
為替リスクは円高の時に顕在化します。ドル資産を円に戻す際に、購入時よりも円高となった場合に利益の割合よりも為替の差損の方が大きくなる可能性があります。
反対に円安になった場合は、差益になる可能性もあるので一概に弊害があるわけではありません。
<日本人は外貨建て資産に苦手意識がある?>
お金のプロが「外貨建て貯蓄型保険」を勧めない3つの理由 | 老後のお金クライシス! 深田晶恵 | ダイヤモンド・オンライン
外貨建て保険に関して以前から問題視されています。
長期間お金を投資して必要になった老後のタイミングで資産が元本割れすることで、「資産がマイナスになった」と苦情・クレームに繋がるケースが多いようです。
これに関しては自己責任と言いたいところですが、恐らく売り手側の保険会社や銀行が十分に説明していない点に問題があると言えます。
ただこういった話が出てくることで「外貨建て商品=悪」という図式がインプットされるのはいただけないなと思います。
外貨建て商品自体は為替の差益・差損両方あるということをしっかり理解しておけば有効活用できます。ただ、長期間資金が拘束される上に、引き出す時期が決まっている保険に活用するべきかという疑問はあります。
<外貨建て資産に投資する意義とは?>
老後の備えという意味では「引き出し方」も考えないといけないので、例えば引き出す時期を分散させて為替リスクを分散させれば対策になります。
では外貨建て資産に投資する意義は何でしょうか?
筆者の見解は「長期的に見て強い通貨にしっかり投資するべき」と考えます。
つまり
・円が20年、30年後も強いと思うのであれば円資産を多めに
・円が弱くなると思うのであれば一定割合をドル資産に
ということだと思います。
通貨が弱くなる・強くなるというのは「極端な通貨高・通貨安」ということです。日本国内だとどうしても「円安の方が良い」という印象が強いです。日本の株式市場も円安の方が好感触なので円高を忌避する傾向があります。
この感覚で投資すると「円安になって欲しい」と思うようになります。
ドル資産に投資した場合、ベストシナリオは「投資収益+為替の差益」です。
これは「ドル資産を円に振り替えて引き出すこと」を前提にしています。
ただ通貨安ということは「その通貨に価値がないこと」を意味しているので本来的には良くないことです。通貨の価値が下がる場合、最終的にはその国の経済力や国力にも影響してきます。円安にメリットがあるのは日本で作った製品を海外で売却するケースですが、それ以外はデメリットの方が多くなります。
日本の場合、自前で調達できず海外からものを買うことが多いので円安が過度に進行すると「コスト高」となります。
現在は「通貨の価値が徐々に下がっている」状況です。
メジャー通貨では「ドル」が粘っていますが、その他の通貨は価値が下がっています。つまりドル高・その他の通貨安です。
アメリカも貿易赤字の解消に向けてドル安を狙っていると言われますが、コロナショックによる各国経済状況の悪化により「ドル一強体制」になろうとしています。
この状況を踏まえると「強いドルに投資する」必要があるのではないかと思います。
上述の通り、日本人はそもそも心理的に円に対して優位に考える傾向があるので「意識的に」ドルに振り分けるようにしていった方がバランスが取れると思います。
全額ドルに振り分けるかどうかは意見が分かれると思いますが、全額円だけに投資するというのは先々を踏まえるとリスクが高いのではないかなと思われます。
<為替の差益・差損はどうするか?>
例えば積み立てた資産を引き出すタイミングで極端な円高になったらどうするか?
対処法はいくつかあるかと思います
・必要な分だけ円に振り替える
・引き出すタイミングを分散する
・ドルのまま保持する
積立は分散するという方も多いと思いますが、引き出す時も分散することでリスクが軽減されます。
一気に引き出すことを考えてしまうとその時の収支・為替の状況が気になりますが、分散すればその意識も軽減されます。
また本来は投資資産から現金を引き出すのは「必要な分だけ」に限るべきです。なので投資する前から「収益をあげた後の」為替リスクを気にしすぎるのはどうなのかなと思います。
ドルが強くなる傾向があるのであればそこに素直に乗り、円資産への投資は保険程度に留めておくべきなのかなと思います。