・高配当株投資
・連続増配銘柄投資
といった「配当」に着目する投資は以前から人気の投資法です。
<配当狙い投資法が人気の理由>
把握している限りではこの本がキッカケではないかと思われます。
さらにバフェット太郎氏の著書のベースになっているジェレミー・シーゲル教授の考え方があるわけですが、「不労所得」という夢を持つ方にとって配当収入は「労せず、所有するだけでお金が定期的に入ってくる」ところに魅力を持っているのではないかと思われます。
筆者もそうでした。
<配当収入が良いと思われる理由>
・定期的に「収入」が入ってくる
・とりわけ米国株は高配当・増配傾向である。リーマンショックのような経済クラッシュにも耐えた企業があり信頼感が高い
といったところだと思います。
本業収入以外に収入(インカムゲイン)を得たい場合、様々な手段がありますが配当は株式やETFを購入する「だけ」で得られるので非常に楽です。
<でも、定期収入を得たいなら不動産投資の方が良い?>
定期的に本業以外の収入を得る方法として配当は手軽です。
でも筆者としてはインカム型(定期的に収入を得るパターン)で収入を得るのであれば不動産投資をオススメします。
理由は「収入のベースが安定しているから」です。
経済がいかなる状態であっても家賃が下がるというのはよほどのことがない限りはないので、家賃を定期的に得てローンを返済できる状況が維持できるのであれば不動産投資の方がメリットは大きいです(税制面でもメリットがあるのですがそこは割愛します)。
いやいや、不動産はお金借りたり、管理しないといけないじゃない?
という疑問を持つ方もいると思います。
不動産投資は誰でもできるわけではないので、しっかり勉強して自己責任でやって欲しいのですが、ここでは「配当狙い」戦略が実はあまり良くない理由を解説します。
不動産投資のメリット、デメリットはまた別の機会で触れます。
<配当金「狙い」をオススメしない理由>
・配当金の分配は本来「後ろ向きな取り組み」
・連続配当、高配当は必ず保証されているわけではない(安定はしていない)
・税制面でのデメリット
企業が収益をあげた場合、使い道は以下の3つです。
・設備投資など、さらなる収益拡大の取り組みに使う
・自社株を購入する
・株主に配当として分配する
事業を拡大させる設備投資をしてより収益を増やしていくのが最も自然な取り組みです。
株主に収益の一部を渡してしまうより、少しでも事業拡大に繋がる使い方をした方が良いという考え方は伸び盛りの企業、上場間もない企業がそういった選択をします。
次に自社株の購入です。自社株を購入すると市場に出回る株数が減るので株単価が上昇します。つまり「株価の上昇」によって株主に還元するというやり方です。
このやり方は企業にとっても税制メリットがあり(内部留保するよりも税制面で優遇される)、好ましい還元方法です。
ウォーレン・バフェットも良い企業の評価基準の1つに自社株買いを挙げています。
自社株買いは毎年実施しなくても良い(自社株を買わないことにより、評価が大きく下がることはない)ので、実施・未実施によるブレが少ないのもメリットです。
最後が株主への分配。つまり配当金です。
つまり配当を出すというのはそもそも「収益向上取り組みの最終手段」でもあります。
支援してくれた株主への謝礼ということも意味しているので、配当を出すこと自体は特に問題はありません。アップルやマイクロソフトのような今なお先端を行く企業も配当を出しています。
成長性が一段落し、成熟期を迎えた企業の象徴と評価されることが多い配当金ですが、「利益のほんの一部」を株主に還元しているレベルであれば適切な対応と言えます。
問題は
・連続配当
・高配当
という取り組みは「止めてしまうと大きく評価を下げる」デメリットがあるということです。バフェット銘柄の1つクラフト・ハインツ(KHC)は長らく高配当株として君臨していましたが業績低迷等により減配を余儀なくされました。
そして減配により、さらに株価が低迷する悪循環に陥っています。
配当により人気を得ている銘柄、高評価の銘柄は「循環を絶対に止めないこと」が求められます。止めてしまうと株価が減少し、資産価値が下がってしまいます。
何十年も連続して配当を出し続けている、あるいは毎年幾らかでも増配を続けているという企業は
・利益も右肩上がり
・利益の中から無理のない範囲(無理しているかどうかは「配当性向」で確認できます)で配当金を出しているか
この2点を常に問われているのです。
配当金狙いの投資は「常に配当が出続けること」を前提としています。
毎月定期的に不労所得を得るイメージで考えるからです。しかしその血流が止まってしまったら戦略は崩れてしまいます。実は綱渡りの投資法でもあるのです。
米国企業の成長性に期待する投資はあくまで株価の上昇、含み益の上昇のことを指しており必ずしも配当を連続して貰い続けることを保証しているものではないと筆者は考えます。
さらに言うと1つの企業が出す配当の利回りは2%〜3%。高配当の企業は5%前後と言われていますが、5%の配当は裏返すと利益の割と大きい部分を株主還元している可能性が高く、ギリギリを歩いている可能性は高いです。
いずれにしても数%の配当から毎月本業に近いレベルの収入を配当から得るには数千万単位の投資元本が必要です。副業レベル、お小遣い稼ぎでも数百万を投じて2%〜3%の還元を得ることになります。
多くの投資元本を用意するのも大変なのですが、それだけ大きなお金を「常に入れ続けないといけない」わけなので危険性は高いと言えます。資金を積めばキャッシュマシーンはできるのですがキャッシュマシーン自体の価値が毀損する危険に晒されている状況でもあります。
配当金を多く出す企業は成熟期を過ぎており、下がった状態からの逆転は難しい状況でもあります。何らかの理由で株価が下がってしまい含み損になっても巻き返しが難しくなってしまいます。
配当金を得る投資は1つの方法ではありますが、安全・安心の投資法ではない点認識しておく必要があります。
そして配当金には税金がかかります。米国株の場合
・配当金に対して20.315%の税金(NISA口座であれば免税)
・約10%の源泉徴収(外国税額控除により取り返すことは可能)
がかかります。
NISAは年間最大120万までなので、配当金「狙い」投資でなるべく多くの配当収入を得ようとしている場合、年間120万どころではない金額を投じることになるので効果は全くないわけではないですが、NISAに頼り切るわけにはいきません。
ということで配当金をもらうこと自体は悪くはないのですが、できれば株価拡大、それよりも投資した企業の価値向上に収益を充てて欲しいですし、将来にわたって安定した収入が確保できるとは限らないという点で
・配当金が高いから
・配当収入を貰うだけなら楽だから
という理由「だけ」で投資をしない方がいいですよというお話しです。
配当金投資に関しては以前も解説しましたが、
・配当金再投資による複利運用での資産拡大
・エクイティ・ボンドという概念
といった部分が「配当って素敵」という誤解に拍車をかけているのではと筆者は考えています。この辺はまた機会を改めて解説します。