前回の記事ではグロースとバリューの違い、市場サイクルに当てはめた上で相互に適したタイミングがあり、その観点ではグロースとバリューは対立しないという整理をしました。
今回はグロース・バリューと並んで論争が起きやすい
・集中投資
・分散投資
について同じく特徴を整理した上で、農業に例えてみたいと思います。
筆者は
・「資産を増やすなら集中、資産を守るなら分散」の原則に従うべき
・アセットアロケーションの観点では分散必須(理由は後述)
・期待する資産拡大ペースとの兼ね合いで調整するべき
と考えています。
どちらか一方というよりは特徴を理解して配分した方が適切です。
(集中投資)
・少数の銘柄に資金を集中させること
・リターンもリスクも大きい
・1銘柄あたりのリターンが大きいため、プラスが大きくなりやすい
・万が一購入した銘柄が大きく暴落した場合、資産全体への影響がとても大きい
・管理が容易
(分散投資)
・資金を複数の銘柄に分散させること
・リスクとリターンが分散される
・1銘柄あたりの購入量が少ないため、プラスも小さい
・万が一どれかの銘柄が大きく暴落しても、資産全体への影響は小さくなる
・管理が煩雑
株式投資においてポートフォリオという概念(言葉)が出たことで、安全に資産運用するには購入銘柄を分散させるべきという考えが台頭してきました。
また購入銘柄数が多いほどリスクが軽減される(一方で購入数が多すぎてもリスク軽減効果が少なくなる)ということもあり「分散投資」が大事という考え方が徐々に浸透してきています。
よくリスクの観点で分散投資のメリットが語られますが、一方で収益の観点も重要です。
当たり前ではありますが
・100万円
・10万円
では同じ年率5%の収益でも得られるリターンは異なります。
得たリターンを再投資する場合、リターンが大きければそれだけ早く総資産が拡大するので資産拡大を狙っている場合、分散によってリターンが少なくなってしまうことよしとするべきかどうかすごく悩むことになります。
また購入後もしっかりと管理するべきという前提で考えると分散した場合、分散した分だけ管理するものが増えてしまうので手間がかかるという問題があります。
<2.集中投資と分散投資は収穫量と自然災害リスクで例えると分かりやすい>
特徴とメリット・デメリットを整理した上で、本題です。
集中投資と分散投資は農業で例えると
集中投資:1つの作物を大量に育てる
分散投資:様々な作物を育てる(1つ1つの栽培量は少ない)
と言うイメージでしょうか。
1つの作物を大量に育てるというのは米や麦をものすごく広大な土地で育てることと思っていただけると分かりやすいかと思います。
こんな感じですね。
当然育てる量が多ければ収穫量が多くなります。
需給バランスにより、育ち過ぎはかえって良くないという話もありますがそれは置いておくとして「収穫量=収益」とした場合、多く収穫できればその分収益に跳ね返ってきます。
なので、多くのリターンを期待したければ集中させた方が早道ということです。
ただし、ニュースなどで台風がきた時に田んぼや果樹園の状況が報じられることから分かる通り、1つの作物に集中するということは「自然災害が起きた時に全滅するリスク」があるということです。自然災害リスクです。
台風が来て収穫直前のりんごが全て落ちてしまったというニュースが一番分かりやすいですが、もう少しで利益獲得(収穫)だったのにその前に不況がやってきて資産がマイナスになる(りんごが全て落ちてしまう)というリスクを集中投資では抱えることになります。
ヘッジするものがないと損失になってしまいます。
様々な作物を育てるというのは例えば畑の区画ごとにキャベツや大根など様々な野菜を育てつつ、イチゴ農園も手掛けるなど多彩に運営するイメージを思い浮かべていただけると良いのかなと思います。
多くの作物を育てているので例えばキャベツが収穫できる時期に病気が流行ってしまい、上手くいかなかったとしても大根やイチゴは成熟する時期が違うので問題がないといったことがおきます。
1つの銘柄が暴落しても他の何かが無事、あるいは多くの収益をあげられていれば全体としては問題がないということです。
ただ、1つ1つ収穫量が異なり卸値が異なるため、収益にはばらつきが生じます。
また1つの作物ごとの収穫量は集中するのと比べて少なくなります。
さらに様々な野菜や果物を収穫まで管理するのは大変です。寒くなったら霜対策、葉っぱを間引いたり病虫害の対策を作物ごとに変えていかないといけないとなるとなかなか面倒だなということが分かります。
個別株の場合、購入した後は決算情報などフォローする必要があるので数が多くなると管理する手間も増えることになります。
<3.まとめ>
農業を始める。農業とまではいかなくても家庭菜園を始めようと思った場合、いきなり複数の品目を育てるというよりもまずは育てやすいものからとなると思います。
株式投資も同様でいきなり幾つもの銘柄を購入すると大変なので始めは1つか2つぐらいから始めた方が手間がかからず長続きします。
また、株式投資を行う目的が資産を増やすことであれば最初はできる限り増やす方向に持って軌道に乗せたいと考えるのが自然です。なので初期段階は集中投資の方がスムーズに取り組めると思います。
株式投資を行う目的が「資産を守ること」であれば、また集中投資によって増えた資産を維持したいのであれば、一定数銘柄を分散させてリスクを分散させた方が資産全体へのマイナスの影響を軽減することができます。暴落して資産が大きく削られてるとモチベーションも下がってしまうので、分散してリスクを軽減させるようにした方が良いでしょう。
目的に応じて、資産状況に応じて購入銘柄の分散度合いを調整した方が良いということです。
<4.アセットアロケーションは分散すべし>
ここまでは株式投資における集中・分散について整理しました。
ここからはアセットアロケーション(金融資産の組み合わせ)における集中と分散の説明をします。
アセットアロケーションの観点では「分散」が必須です。
何故なら金融商品によって「得意とする時期が異なるからです」
・株式
・債券
・金
はそれぞれ景気の良い時・悪い時・インフレ/デフレの区分けで得意とするところがあります。
金融商品を分散させるというのは得意とする時期を満遍なく網羅させることを意味します。
景気の良し悪し、今がインフレかデフレかを見極めるのは難しいです。大抵は後付けで知ることになります。また景気の良い・悪いを把握して金融資産を移動させるというのが簡単なようで実際やるとなると難しいので金融資産は予め分散させておいた方が良いです。
金融資産の分散と株式投資銘柄の分散は意味が異なると思っておいた方が混乱が回避できると思います。